気に入った時計を買って純粋に身につける。
これが時計を買う主な理由でしょう。
しかし、時計界の王者とも称されるロレックスに限っては「投資・投機目的」で買う方もいらっしゃいます。また、「投資」ほど本格的でなくとも、一般ユーザーも「リセールバリュー」を意識する消費スタイルへと変わりつつあります。
何故ならここ数年ロレックスは右肩上がりで高騰しており、購入して数年後に売却すると、思わぬ得をする可能性があるためです。あるいは、買値より高く売れるケースが出てきているのです。
今回は「ロックス投資は儲かるのか?」「ロレックスは投資商材となりうるのか?」という疑問に答え、ロレックス投資に興味がある人に知っておいて欲しい5つのポイントをご紹介致します。
※ロレックスの金融商品としての価値をお約束するものではございません。参考程度にお読みください。
目次
ロレックス・株式・金・外貨。投資商材を徹底比較!
ロレックスに限らず、投資を行ううえでの不安材料・・・当然ですが、「儲かるかどうか」(収益性)「損しないかどうか」(安全性)ですよね。また、「売りたい時に売れるか」(流動性または換金性)、も重要です。
この三つが、投資対象となるかどうかの基本的な要素と言えるでしょう。
この三つを頭に入れたうえで考えたい、ロレックス投資。
そもそもロレックス投資という概念が出回り始めたのは、結構最近です。
ロレックスに限らず、高級時計を投資商材として見る傾向は、かつてはここまで高くなかったように思います。もちろん「再販しやすい」「資産価値がある」といった認識はありましたが、「投資」を視野に入れた消費者マインドは、ここ数年で形成されたものとなります。
「再販できる」と「投資商材となる」は別物です。なぜなら、後者においては前述した投資対象の三つの基本要素―「収益性」「安全性」「流動性」-を考慮する必要があるためです。
本当に、ロレックスは投資商材たりえるのでしょうか。資産運用として、オイシイのでしょうか。
そこで、投資商材として語られる株式・金・外貨といった各金融商品と、ロレックスの2017年1月~2020年までの当店での平均買取価格の推移をグラフにするとともに、ロレックスの「収益性」「安全性」「流動性」を考察してみました!
なお、対象とするロレックスは現行デイトナ 116500LN 白文字盤 となります。
データの出典
日経平均株価:世界経済ネタ帳 https://ecodb.net/stock/nikkei.html
金価格:田中貴金属工業 https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/m-gold.php?mode=1
為替レート:世界経済ネタ帳 https://ecodb.net/exec/trans_exchange.php?type=EXCHANGE&b=JPY&c1=EUR&ym=M&s=&e=
まず、ロレックス以外の投資商材それぞれから収益性,安全性,流動性あるいはその他投資商材としての入りやすさなど、投資としての「酸いも甘いも」を見ていきましょう。
株式投資
2017年~2019年にかけてはおおむね好景気だったと言われていることもあり、日経平均株価は大体の地点で2万円台をキープしていました。グラフを見て頂けると、比較的高値をキープしていることがおわかり頂けるでしょう。
基本的に各社の株価は日経平均に連動する傾向がありますので、1万円台の頃に株式をご購入されていた方が2019年に売ったとすると、売却益を得られた、可能性が高くなります。また、株はその企業の応援にもなったり、配当金や株主サービスが受けられたりするメリットもありますね。つまり、収益性でオイシイことが大きいケースもある、ということになります。
一方で「売りたい時に売りたい値段で売れる」とは限りません。株式売却の際、「指値注文(値段を指定して売る)」「成行注文(値段を指定せずに売る)」のいずれかを選択することとなりますが、前者の場合なかなか値段の折り合いがつかないと売買不成立になったり、後者の場合は思ったよりも安い価格で売却せざるをえなかったりするケースがあります。
また、株式はえてして銘柄が多すぎて、初心者は手を出しづらいかもしれません。
さらに言うと、株式は株価変動リスクのみならず、企業が不祥事や経営難によって株価下落し、それに巻き込まれてしまうリスクも考慮しなくてはなりません。
金投資
では、金は投資商材としてはどうでしょうか。
金は「安全資産」の典型です。世界中でその価値が広く認められているため、地政学リスクが高まったり不景気の時にこそ買いが集中し、価格が上がる傾向にあります。基本的に、株価と金価格は反比例の関係にある、とも言われています。
しかしながら近年では、好景気の時にも金に買いが集中する傾向が見られています。これは金ETF(上場投資信託)の普及によって個人投資家も参入しやすくなったこと。中国やインドなどの大国の経済活動がますます活発となり、宝飾品需要に伴う金需要が増え続けていることが理由として考えられます。実際2000年には1グラム1,000円前後で取引されていましたが、2020年には1グラム5,000円前後と右肩上がりに高騰しています。
さらに2022年はウクライナ情勢も手伝って、2月21日に7,790円/gと過去最高額を更新。今なお上昇を見せて続けるという、前代未聞の状況となっております。
一方で金には株式のような配当や優待等はありません。価値に関しても短期間で大幅に値が動く可能性は低く、収益性という観点から見ると少し低いかもしれません。
金は長期的に見た安全資産、といった傾向の方が、世界的に見ても強いことがわかりますね。
外貨投資
外貨については、外貨預金やFXなどがスタイルとして挙げられますね。外貨預金の方がより広く知られているでしょう。
基本的に為替と連動しているため、初心者でもわかりやすい投資手法でもあります。
例えば100万円を米ドルで外貨預金した際、10年後に円安ドル高がその当時より進んでいれば、日本円に戻して差分を利益として獲得することができます。日本は金利が低いため、より高金利で預けられるのも魅力ですね。
一方で円高になった時はその逆に損をしてしまうこと。また、日本円から外貨にする時、あるいはその逆を行う際に、手数料がかかってしまうといったデメリットがあります。
ロレックス投資
それではロレックスの、投資商材についての考察をしてみましょう。
デイトナ 116500LNの新品定価は1,609,300円(2022年3月現在)ですが、数年以上にわたって定価を大きく超える実勢相場を描いており、買取価格ですらそれを上回っていることを、上記グラフでご確認頂けるでしょう。
前述の通り、投資商材として着目すべきは「収益性」「安全性」「流動性」です。
収益性において、過去4年の価格推移からもわかるように、期待できると言っていいでしょう。
例えば現行デイトナのみならず、現在ロレックスのスポーツモデルの多くが価格上昇しています。いや、スポーツモデルに留まらず、デイトジャストやオイスターパーペチュアルといった、かつてはお得に買えたロレックスまでその相場を高騰させています。
定価を超えた相場の個体も少なくなく、もし正規店で購入できた場合、その足で時計専門の買取店に持ち込めば数十万円(あるいは100~200万超!)の収益を手にできるケースもあります。
さらに生産終了したモデルに目を向けると、その動きは顕著です。ロレックス相場は為替と連動することが多く、円安時には相場が上昇し、円高時には下落傾向となります。輸入品であるため、仕入れ価格が上下するためです。
でも、生産終了品には当てはまるとは限りません。市場で状態の良い個体が年々少なくなっていってることから、為替や国内の景気状況にかかわらず、値上がり傾向を続けています。
「安全性」の面においては、元本が保証されるかどうか、ということになりますが、どの投資商材も元本割れを徹底して絶対に防ぐ、というのは難しくなります。
ただ、ロレックスは投資商材として語られる以前から価値の落ちづらさには定評がありました。何年か使用したうえで再販した時でも、比較的高値で売却できる、ということです。
さらにここ数年ほどでは、人気モデルに至っては購入時の6~7割、大人気モデルだと8割以上で買取されるケースも出てきております。価値の目減りがきわめて少ないと言っていいでしょう。
長年の価値の落ちづらさは、流動性、すなわち現金化しやすいことにも繋がります。
時計は持ち運べる資産、と言われることもあり、自由に査定に出したり、買取店を複数回ったりしやすいメリットがありますね。保管においても、比較的容易でしょう。
二次流通市場も確保されており、街中にロレックスを積極的に買い取りたい専門店が林立していることも、流動性を担保してくれます。
こういった側面から、他の投資商材と比較してもロレックスは優れた金融商品である、と言えますね。
しかしながら、他の投資と同じく当然ながらリスクはありますし、購入価格を大きく上回って売却できるモデルは一部です。また短期的な急騰というのは起こりづらく数年かけて少しづつ高騰していきますので、短い期間で確実に利益を出したいという方には不向きな投資と言えます。
さらに近年では新型コロナウイルスなど社会情勢の影響で相場のアップダウンが激しく、「いつ買いで、いつ売りなのか」は業界に精通しているプロでも予想が難しいのが現状です。
でも、難しいとはいっても長期スパンで考えれば利益を出すことは決して不可能ではなく、損をしない立ち回りをすること自体は可能です。
そこで、ロレックス投資を始めるうえで知っておいてほしいポイントを次項でご紹介いたします。
ロレックス投資を始める前に知ってほしいポイント5つ
ロレックス投資を始める前に、知っておいてほしいポイントをご紹介いたします。
ロレックス投資の重要なポイント① 生産終了モデルを狙う!
生産終了モデルは現行モデルとは異なり市場に出回る本数が限られます。限られた数を買取業者が奪い合うため、価格が上昇しやすいと言えます。
売却のタイミングによっては現行モデルで利益を出すことも可能ですが、投資として結果を出すためにはやはり適正な時期に生産終了モデルを買っておくのが重要なポイントとなります。
安く買って高く売ることは投資の鉄則であり、今後伸びそうな生産終了品は是非とも確保しておきたいところです。
実際に投資モデルとして結果が出たデイトナ Ref.16520を例に挙げてみましょう。
この16520は近年のロレックスで最も価格が沸騰したモデルであり、ロレックス投資家をニンマリさせたモデルです。
このデイトナRef.16520は2世代前のデイトナですが、2016年に最新デイトナ116500LNが発売したことにより、その価値を大きく上げました。
発売当初は約50万で買える時計でしたが、現在は400万以上払わなければなかなか買えない時計となっており、買取価格も300万円を超える査定額が提示されることも珍しくありません。
20年ほど前に買って、今売ることができた方は大きな利益を得ることができたでしょう。
ロレックスの時計は生産終了直後や、新モデルの発売直後に旧モデルの価値が高まりやすくなるため、16520は今まさに売り時を迎えています。
大切なのは今後伸びそうなモデルを手に入るうちに手に入れておき、売り時がくるまで待つことです。
現行デイトナの116500LNもいつかは旧デイトナとなりますが、その時に価値が更に上がる可能性もあります。しかし、逆に相場が下落して損をしてしまう可能性もあります。
投資は云わば賭けですので、今後相場がどのように変動するかは熟練のプロであってもわかりません。
ロレックス投資の重要なポイント② 流通量の少ないモデルを狙う
ロレックスの時計はどの時計も常に高い相場を維持しています。大きく相場を崩すことがないため、買う時期さえ間違えなければ大きく損をすることは少ないです。
しかしながら、流通量が多いモデルに関しては投資に向いているとはいえません。
最たる例はエクスプローラーの定番人気モデル。
これらのモデルはロレックスの人気ランキングで必ず上位に食い込んでくる人気作ですが、その人気故に流通量が非常に多くなっています。
流通量が多いモデルは必然的に安定相場となるので、爆発的に相場が上がることは考えにくいです。
ただし買った金額の80%程度は売却時に取り戻すことは可能です。またエクスプローラーIは2022年のモデルチェンジで大きく注目されており、かつてほど流通が豊富とも言えなくなってきていることは事実です。
前項で例に挙げたデイトナ16520は製造年数自体は約12年間製造されたモデルですが、ゼニス社からのエルプリメロムーブメント供給に限りがあったため、少ない製造数となりました。その少ない本数を海外バイヤーや海外時計ファンが買い漁った結果、希少価値が年々上がり、遂に相場が爆発的に高騰したのです。
また、過去のデータから「製造期間が短いモデル」「数量限定モデル」も同じく高騰しやすいということが分かっており、数年後に売却して利益を得るならば、このような時計を狙う方が良いでしょう。
ロレックス投資の重要なポイント③ そもそも使わないという選択肢もある
時計は一度でも使ってしまうと中古品として扱われてしまうため、未使用品と比べると大きく査定額を落としてしまいます。そのため投資目的でロレックスを買うのであれば、そもそも使わない、という選択肢も視野に入れておきましょう。
中古品と未使用品では数十万も買取価格に差が出ることがあるため、一切使わずに大切に保管しておく、と。
ただ、ここまで徹底すると「金」などの一般的な現物資産を投資物に選んだ方が良いかもしれません。
趣味性のある投資物であることがロレックス投資の魅力であるとも言えますし、そこにロレックスがあるのに身に着けることができないというのは、時計好きにとっては大きなストレスとなるでしょう。
それでも「使わずに投資用に保管しておく」という固い意志がある方は、保管の際にメーカーの保護シールは絶対に剥がさないようにしましょう。このシールを剥がしてしまうと未使用品と見なされなくなることがあります。
近年ではロレックスが転売対策として、ブティックでは販売時にメーカー保護シールを剥がす意向となりました。そのため保護シール付き個体の価値はますます高まり続けています。
今現在、既に保護シール付きのロレックスを所有していたり、これから購入できた方は、金融商品として扱うなら剥がさないことが得策です。
※ただし、ずっとゼンマイを動かさないと、ムーブメント内部の油が固着する可能性があります。定期的にリューズを使って優しくゼンマイを巻いてあげましょう。
ロレックス投資の重要なポイント④ 付属品は無くさない
忘れがちですが、時計の付属品も立派な商品の一部です。
特に生産終了モデルに関しては箱や保証書といった付属品の有無が査定金額に大きな影響を与えるため、絶対に紛失してはいけません。これは時計を持っている全ての方に当てはまりますが、ロレックス投資をお考えの方は特に意識してください。
ギャランティーカードは極めて重要ですので大切に保管しましょう。箱も重要ですが、シリアル番号が記載されていない箱は本当に付属品であったのかが定かではないため、仮に無くしていたとしても極端に買取価格が下がることはありません。
ロレックスを投資物としか見ないのであれば、買った状態で湿気がこもらない場所に即封印してしまうことがオススメです。
ロレックス投資の重要なポイント⑤ 買取店はロレックスに精通したところを選ぶ
他の投資商材と異なるのが、ロレックスを売却するプラットフォームは多数存在する、ということです。
例えば個人売買することも可能ですし、買取業者とひとくちに言ってもブランド品をたくさん扱う買取店や質屋などが溢れかえっていますね。
ロレックスを適正価格で売却するためには、ロレックスに精通した時計専門の買取店を選ぶようにしましょう。
ロレックスにはパッと見ただけではわからないレア仕様などがあり、お持ちのロレックスが思わぬ価値をつける可能性があるためです。時計に詳しくない業者だと、そういったポイントが見逃されてしまったり、適切な市場相場を知らなかったりする可能性があります。特にアンティークロレックスは、仕様が多岐に渡っているため注意が必要です。
また、時計専門店は販売ルートを確保していることがほとんどで、「絶対に売れる」と言う自信からロレックスを値切らず、高値で買い取ってくれる傾向にあります。
そのため、ロレックスの買取実績が豊富な買取業者を売却先に選びましょう。
ロレックス投資に興味を持ったらまず相談
ロレックス投資は云わば株や為替と同じです。インターネットを駆使し、日々相場の変動をチェックすることが必要となります。
しかしながら一個人が最新の情報を常に仕入れることは困難であるため、詳しい市場動向を知りたいのであれば「時計買取専門店」に時計を持ち込んで、価格を聞くことをオススメします。
買取査定員に意見をもらうことで、現在お持ちの時計の大よその価値が分かるはずです。
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この記事を監修してくれた時計博士
田中 拓郎(たなか たくろう)
- (一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
- 高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB・システム系全般を担当している。
時計のマーケットに非常に精通しており、買取相場や買取お役立ち情報はもちろん、リユース業界の報道や最新ニュースなど、幅広い分野で監修に携わっている。
また、スイスで行われる腕時計見本市の取材も担当してきた。得意なブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年。