「さすがにもう価格は下がるだろう」と、言われ続けてはや幾年。
デイトナ 116500LNは2016年のリリース以来、定価を一度も下回らずにプレミア価格を維持しています。
「維持」どころかその売値は目下、上昇中。「もうさすがにこれ以上は価格が上がらない」と都度つど言われていはいるものの、いまだ天井知らずの状態です。時計業界では、まさに「未曾有」の事態と言っていいでしょう。
確かに近年のロレックス市場は拡大を続け、それに比例して並行価格は右肩上がり。しかしながらデイトナ 116500LNは、その中でも抜きんでた相場を形成しています。
いったい、なぜデイトナ 116500LNの価格高騰は止まらないのでしょうか。
この記事では、デイトナ 116500LNおよびロレックス相場の価格高騰の秘密に迫ります!
目次
ロレックス デイトナ 116500LNとは?
デイトナ 116500LNは、2016年に発売されたロレックス唯一のクロノグラフモデルです。デイトナ自体が1960年代(公式では1963年)から続くロングセラーシリーズで、現行は第六世代となります。
直径40mm×厚さ12.5mmのケースにセラクロムベゼルが非常にスタイリッシュ。とりわけこのセラクロムベゼルによって獲得された独特の顔立ちと高級感は、もともと高かったデイトナ人気をさらに押し上げることとなりました。
また、エンジンとして自社製ムーブメントCal.4130を搭載していることも特筆すべき点です。
このムーブメントは精度に優れることはもちろん、ロレックスの独自機構により高い耐磁性,耐衝撃性,メンテナンス性と言った実用面で突出しており、「傑作クロノグラフ」の呼び声を欲しいままにしてきました。ちなみにCal.4130がコンパクトな設計になっているからこそ、デイトナ 116500LNのスタイリッシュは堅持されていると言えるでしょう。
このように内外ともに死角のない当スポーツモデルの定価は1,609,300円(税込)。
ちなみに初出では1,274,400円の定価でしたが、2019年10月、2020年1月、2021年8月、次いで2022年明けてすぐの四連続で価格改定が行われました。
もっとも、正規店でデイトナ 116500LNを購入することはきわめて難しく、もっぱら定価はあってないようなものと囁かれます。
ロレックス デイトナ 116500LN 相場動向2022
現在の116500LNの実勢相場は以下の通りです。なお、2022年1月、当店GINZA RASINで販売した中古価格をもとに算出しております。
116500LN 白文字盤:530万円前後~
116500LN 黒文字盤:470万円台~
黒文字盤の方は若干安いとは言え、現在過去最高の並行相場を記録しているデイトナ 116500LN。ちなみに中古価格はコンディションや保証書の年式にもよりますが、新品・未使用品とそう大差ない状況が続いています。
冒頭でも述べたように、デイトナ 116500LNはリリースされた2016年から、一度も定価を下回ったことがありませんでした。
過去の相場動向を簡単に解説いたします。
①2016年~2019年の116500LNの相場動向
2016年の初出時、116500LNの白文字盤モデルは200万円。国内入荷は6月頃です。
ちなみに今でこそロレックスの新作モデルがファーストデリバリーで200万円超えの相場を記録することは珍しくありませんでしたが、2016年当時はまだ今ほどロレックス相場が上昇していない頃です。
バーゼルワールドでセラクロムベゼルを搭載した新型デイトナ 116500LNを見た多くの業界人が、「ものすごい人気が出そう。あるいは180万円の相場を記録するか?」などと言っていました。いかにこの初値が高額か、おわかり頂けるエピソードでしょう。
その後一時期200万円を切る程度には落ち着くものの、年末商戦があってか2016年末に再び相場が200万円台を突破。2017年下半期からは上昇率が格段に高まり、250万円を超えるのに一年もかかりませんでした。
この頃から「さすがにもう相場は下がる」と言われ始めるのですが、この予測は見事裏切られたことはご存知の通りです。
なお、2018年頃よりロレックスは各国での定価の足並みを揃えようとする思惑を出してきました。これは万国で「価値あるロレックス」という印象を植え付け、国際的な競争力を高めていく狙いがあります。もちろん全く一緒と言うわけではありませんが、従来は国内外の価格差を利用して安く仕入れていた並行相場が一気に上昇することになったのは、容易に想像できますね。
こういった背景から、多少の上下は繰り返しはしたものの、相場はほぼ右肩上がり。2019年6月、ついに当時の過去最高となる300万円超えの並行相場が記録されることとなりました。
しかしながら直後にロレックス相場全体が大きく下落し、デイトナ 116500LNもその煽りを受けることとなります。
もっとも、2019年9月後半に底値を迎えますが、その当時ですら白文字盤は270万円台・・・やはり年末商戦に向けて再び相場が回復し、2019年末には290万円程度まで返り咲きました。
なお、上記相場動向は白文字盤となり、黒文字盤の方が10万円~20万円程度安く推移してきました。
ここまでを鑑みるに、デイトナ 116500LNの並行相場が200万円を下回ったのは、2016年と2017年の一時期のみであること。そして下がる下がると言われつつ、結局は右肩上がりを続けたことがおわかり頂けるでしょう。
②2020年~2022年の116500LNの相場動向
2020年は新型コロナウイルスの影響が時計業界にも波及しました。
当ウイルスの脅威は「感染力」。しかも新型とあって未知の部分が多く、各国では感染症対策として緊急事態宣言やロックダウンを発令しました。
こういった背景からショップが休業したり、人とモノの行き来が制限されたりといった情勢を描くこととなります。
そもそも買う場所がないことに加え、先行き不透明感が蔓延したことで景気が悪化。さらにリスクオフの流れから円高傾向に突入し、2020年明けてしばらくは高値推移を続けていたロレックス相場も、3月以降、急速に下落しました。
ちょうど時期を同じくして日本の7都府県で緊急事態宣言が発令されたいた背景も大きいでしょう。
しかしながら2020年のゴールデンウィーク明けた頃から、じょじょに相場が回復しました。
当時は依然として円高傾向にありましたし、宣言延長も実施されています(結局5月25日まで続きました)。
にもかかわらず、前述した2019年6月の過去最高値を超える高騰相場を叩き出すことに…
さらに2020年下半期から世界各国で経済活動が再開し、また抗新型コロナウイルスのワクチンがじょじょに普及したことで、以前と全く同じと言わないまでも人流や人々の消費が再び活気づくこととなりました。
一方でレジャーや飲食には今なおお金を遣いづらい背景があるため、近年では高級嗜好品―時計・宝飾品に限らず―への購買が盛んに見受けられます。また、長く続く金融緩和制作もあり、カネ余りの状態が続いていること。加えてロレックスを「投機対象」とする向きが大手メディアでも取り上げられ始めたことなどが影響し、ロレックスへの買いが集中しています。
とは言えいったいぜんたい、なぜデイトナ 116500LNはここまで価格高騰しているのでしょうか。どれくらいの上昇率を記録しているのでしょうか。次項で、その要因を解説いたします。
ロレックス デイトナ 116500LNの価格高騰が止まらない三つの要因
こちらが、白文字盤・黒文字盤それぞれのデイトナ 116500LNの、過去6年間の平均価格推移位です。当店GINZA RASINで販売した中古モデルをもとに各年度の平均を算出しております。
■白文字盤価格推移
年 | 付属品 | 平均相場 |
2017年 | 箱/保証書 有 | 2,137,000円 |
2018年 | 箱/保証書 有 | 2,516,000円 |
2019年 | 箱/保証書 有 | 2,800,000円 |
2020年 | 箱/保証書 有 | 2,931,000円 |
2021年 | 箱/保証書 有 | 4,046,000円 |
■黒文字盤価格推移
年 | 付属品 | 平均相場 |
2017年 | 箱/保証書 有 | 2,011,000円 |
2018年 | 箱/保証書 有 | 2,305,000円 |
2019年 | 箱/保証書 有 | 2,591,000円 |
2020年 | 箱/保証書 有 | 2,657,000円 |
2021年 | 箱/保証書 有 | 3,469,000円 |
それではロレックス デイトナ 116500LNがコロナ禍において、価格高騰している要因をご紹介いたします。
①とにかく需要がすごい
先程から「為替」の話をしておりますが、もはやデイトナ相場はこれに関与しないと言っていいかもしれません。円高でも円安でも相場高騰を続けている状況です(もっとも、2016年以降の円安傾向によってロレックス高騰が誘発されたとは言えます)。
その理由は、前項で言及しているように、世界的な需要が圧倒的であるためです。
2018年頃から「各国での価格改定を行った」旨は前述しましたが、同時にアジアの新興国や中国,インドと言った国々で、ロレックス需要が急激に増加しました。
これは、もともとのデイトナ人気も大きいでしょう。
ロレックス唯一のクロノグラフとしてのデザイン性に加えて性能がきわめて優れており、116500LNがリリースされる以前の歴代デイトナも、定価超えのプレミア相場を記録してきました。各国が新型コロナウイルスと付き合いつつ、経済状況を再開させてはいますが、それでもレジャー消費という段階ではない昨今。高級嗜好品への消費が高まっており(リベンジ消費などと呼ぶようです)、結果として高級時計として人気の高いロレックス デイトナへの需要も高まっているという背景があります。
加えて、近年ではデイトナの「資産価値」「リセールバリュー」といった点が注目されています。
これまでは時計の売買に長けた愛好家を中心に語られていたこれらの要素ですが、現在では一般ユーザーが購入時の決定要因として「売却時の買取率(換金率)」を考慮したり、加えて「投機的な目的でデイトナを購入する」といった層が見られたり…明らかに従来とは異なる価値がデイトナ 116500LNに付与されたことで、デイトナへの買いが集中します。
また、デイトナを「持ち運べる資産」として扱う傾向も見られるようになりました。金地金等だと保管も大変ですが、時計は腕に着けられるようなサイズ・重量であること。加えて現金化しやすいことが理由です。
こういった「資産価値」は不景気下においても強く、デイトナ 116500LNの需要喚起につながっています。
②供給量の低減
ロレックスは実用時計に分類されますが、決して大量生産品ではありません。むしろ外装から内部機構を自社一貫製造のもと作り込んでいるため、年間製造量はそう多くありません(正確な製造数はわかりませんが…)。
とりわけデイトナ 116500LNはクロノグラフを搭載した複雑機構。他モデルと比べても各国に流通する量は限られています。
また、前項で「資産価値」としての需要をご紹介しましたが、結果的にデイトナの苛烈な転売行為を誘発しました。
そこでロレックスでは人気スポーツロレックスのバックストックを抱えて販売数や販売する顧客を厳密に管理するように。
加えて、このコロナ禍です。
前述したように各国で緊急事態宣言やロックダウンが発令されたことで、多くのメーカーやショップが休業せざるをえませんでした。ロレックスもスイス本国の緊急事態宣言発令に合わせた3月17日から45日間にも渡って工場を停止。完全にロレックスからの供給はストップし、2020年における製造時間の12%以上が削減されていると言った見方が出ています。
つまり、市場は慢性的にデイトナ不足(ロレックス不足)に陥っており、にもかかわらず前項でもご紹介したように需要が落ちていない状況のため、結果として相場高騰していることがわかりますね。
デイトナ 116500LNの強い需要と品不足は結果として時計専門店の多くを在庫確保に躍起にさせました。海外仕入れや業者仕入れがままならないため個人買取を強化することに繋がり、買取額はうなぎのぼりに上がっています。
時計店にとっては仕入れ値(買取による)が高くなる⇒販売価格も高くせざるを得ない⇒デイトナ相場を高騰させる…このような流れが時計業界で起きているのです。
2022年現在は供給が再開されているとは言え、依然として流通不足の影響は色濃いと言えます。
もっとも、デイトナ 116500LNを中心に、ロレックスをご所有されている方は大きな売り時を迎えていることを意味します。前述の通り多くのショップが個人買取を強化しているため、高額買取が当然のように行われています。
ちなみに、当店でも常時デイトナ 116500LNは白文字盤・黒文字盤ともに積極的に高額買取をさせて頂いておりますので、ぜひご利用下さいませ。
③中古市場の隆盛
需要と供給のバランスが崩れてロレックス価格が高騰している、ということをお話させて頂きました。
さらにもう一つの要因として、ロレックスの中古市場がますます拡大したことで、時計の売買が活性化したというものを挙げさせて頂きます。
前述の通り、ロレックスは資産価値の高さに定評があります。これは最近の話ではなく、かなり以前から言われていたことです。その理由は、ロレックスが早い段階から実用時計を製造する技術を確立していたことにあります。
ロレックスは1926年、オイスターケースを開発しました。
これは、まさに「牡蠣のような」ケース。世界初の防水時計として名を馳せていった歴史は伊達ではなく、その後もロレックスの時計=堅牢という事実は時計業界の常識として君臨していくこととなりました。
さらに、ロレックスはムーブメントのメンテナンス性に対してひときわ努力してきたブランドでもあります。ロレックスはその人気ゆえ、メンテナンスノウハウが広く出回っているという事実もあります。
こういった背景から経年劣化に強く、かつ年式の古い個体でもメンテナンスさえしっかり施せば現役で活用できるものが少なくありません。
つまりこれは、中古であっても売買しやすいことを意味しています。
こういったもともとの特性に加えてデイトナの圧倒的需要および供給量の低減に伴い、中古市場がますます活性化することとなりました。「新品では買えないけど、中古なら…」と言うマインドです。
このマインドが売買を活発にし、さらに前述したように個人買取額が増加する…そんな流れが、現在デイトナ 116500LNを取り巻いており、本項で取り上げた三つの要因によって相場をぐんぐん上昇させているのです。
まとめ
ロレックス屈指の人気商品である、デイトナ 116500LNについて解説いたしました!
デイトナ 116500LNは2016年のリリース以来、定価超えのプレミア相場を築いてきたこと。しかしながら2020年~2021年、過去類を見ないような高騰を遂げていること。その要因は①圧倒的需要②供給量の低減③中古市場の活性化が挙げられることをお伝えできたでしょうか。
今、時計業界の話題の中心と言っても過言ではないデイトナ 116500LN。ご売却をお考えの方は、このビッグウェーブを逃さないようにしましょう!
文:鶴岡
■今狙うべき穴場デイトナはコンビ!価格高騰を続けるロレックスの中でお得なモデルとは?
■生産終了しそうなロレックスを時計買取店のスタッフが大胆予想!
この記事を監修してくれた時計博士
池田 裕之(いけだ ひろゆき)
- (一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
- 高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
1982年生まれ・熊本県出身。
20代でブランド販売店に勤務していく中で、高級時計に惹かれ、その奥深さや魅力を知っていく。29歳で腕時計専門店へ転職を決意し、GINZA RASINに入社。
豊富な時計への知識を活かして販売・買取・仕入れに携わり、2018年8月にはロレックス専門店オープン時、店長へ就任した。販売・買取ともにリピーターが多い。時計業界歴17年。