2004年に登場したタンクソロ。もとよりタンクシリーズはカルティエの「顔」ですが、中でもメンズ・レディースともにラインナップされた、中性的で薄型上品なタンクソロを愛している方も少なくないでしょう。
そんなタンクソロが2021年、カタログから姿を消し、生産終了となりました。
当店GINZA RASINの販売部でも、非常に多く取扱いしてきた定番モデルだけあり、今後の流通や実勢相場が気になるところです。
そこでこの記事では、高級時計専門買取店スタッフが、カルティエ タンクソロの魅力を改めて振り返るとともに、今後の買取動向―とりわけこれからご売却される方に向けて気を付けたいこと―を解説致します。
※掲載する情報は2021年7月現在のものとなります。
カルティエ タンクソロとは?
冒頭でもご紹介したように、タンクソロはカルティエが2004年にリリースしたタンクシリーズです。
そもそも「タンク」とは何かと言うと、第一次世界大戦後の1917年にカルティエから誕生したモデルに端を発する一大コレクションとなります。
戦車の轍(わだち)から範を取ったレクタンギュラー(長方形)型デザインが非常に特徴的ですが、これは同大戦下でフランス(カルティエの本国)を勝利に導いた「ルノー社製の戦車」がインスピレーションの基とされています。また、カルティエは当時アール・ヌーヴォーから脱却し、アール・デコをそのデザインの本懐としていたことも、当該デザインを生み出すに至った背景として大きいでしょう。
このタンクは1919年に発売されますが、さらにタンク ノーマル,タンクLC(ルイ・カルティエ),マストタンクといった派生コレクションに繋がっていきます。
1990年頃になると、カルティエはタンクシリーズのさらなる拡充を試みました。
タンクアメリカンやタンクフランセーズ(フランスのタンク、という意味),タンクバスキュラント(回転するタンク)といった、現在もきわめて人気の高いシリーズが続々と誕生しますが、タンクソロもそんな銘タンクのうちの一つとなります。
ではタンクソロがどのような時計かと言うと、まずその薄くフラットなフォルムが特徴です。
元祖タンクから受け継がれるレクタンギュラー(長方形)ケースはそのままに、モダン・デザインへとアップデートされました。
とは言え機能は2針のみと非常にクラシカルで、ローマンインデックスとシルバーダイアル,青針と相まって、カルティエらしい上品さに溢れます。
なお、タンクソロはカルティエの中では非常に良心的な価格帯で打ち出されたモデルでもあります。
前述したタンク ルイ カルティエと似ていると言われることもあります。
しかしながらタンク ルイ カルティエがゴールド素材をラインナップの基調としていることに対し、タンクソロはステンレススティール製が基本。ピンクゴールドがあしらわれたラグジュアリーなモデルもありますが、裏蓋はステンレスになっており、またリューズにセッティングされたカボションもタンク ルイ カルティエが天然ダイヤモンドやサファイアであることに対し、タンクソロはブルースピネルです。
そのため定価がSS×革ベルトで288,200円~!これだけ美しく、上品で完成されたカルティエウォッチであるにもかかわらず、破格の値段と言わざるをえません。カルティエを初めてコレクションされる方はもちろん、二本目,三本目をお探しの方にとっても、大きな選択肢の一つに加えやすかったことでしょう。
なお、サイズ展開は縦31mmx横24.4mm×厚さ5.55mmのSM,縦34.8mmx横27.4mm×厚さ5.55mmのLM,縦40.85mm x横31mm×厚さ7.65mmのXLの3種となります。
最も大きいXLには自動巻きムーブメントが搭載されデイト付きに。他2機種はクォーツとなります。自動巻きムーブメント搭載機とは言えケース厚を7.65mmに抑えているところは、さすがと言う他ありませんね。
ご夫婦やカップルでのペアウォッチ・シェアウォッチとしても人気で、当店でもプレゼントとしてお買い求め頂くことが圧倒的に多いモデルです。
カルティエ タンクソロが生産終了!今後の買取相場とその動向とは?
出典:https://www.cartier.jp/ja/
冒頭でもご紹介したように、タンクソロは2021年にカタログから消え、生産終了となりました。これは、2021年に新作として「タンクマスト」が加わったためでしょうか。
このタンクマストは1970年~1980年代に製造されていた「マスト ドゥ カルティエ」に範を取ったコレクションとされており、やはりエレガントな薄型かつステンレススティールを基調とした、エントリープライスでの提供となります。
タンクソロの生産終了を受けて我々買取店が気になるのが、「流通量と実勢相場」です。
既存コレクションをアップデートしたランニングチェンジやモデルチェンジであればいざ知らず。コレクションそのものが生産終了となったり、既存デザインや性能から大きく変わってしまうと旧型の稀少性がいや増し(製造数にもよりますが)、時期の早い・遅いはあれどじょじょに相場が上がっていってしまうのです。また、純粋に良い個体が手に入りづらくなる、といったこともあります。
では、現在タンクソロの実勢相場と買取相場はどのようになっているのでしょうか。
①タンクソロの実勢相場と買取相場
前述の通り、タンクソロはもともと良心的な価格設定が行われてきました。また、製造期間も2004年~2021年と長きに渡っており、今すぐ流通量が変わるという状態ではありません。
そのためSS×革ベルトであれば中古相場は20万円台~、ピンクゴールドとのコンビであっても40万円台~と安定しております。ちなみにSS×ブレスレット個体であれば30万円前後~,自動巻きムーブメント搭載のXLモデルであれば30万円台前半~がだいたいの相場感です。
一方タンクソロの―そしてカルティエの―魅力の一つと言えば、値崩れのしづらさ。
もちろんロレックスのように「売却時に、購入金額を大きく上回るような買取査定額が提示された」といった事例は稀ですが、それでも高級時計の中での買取率(換金率)は決して低くなく、2020年の当店で集計したカルティエ全体の平均買取率は51.6%でした。
現在、カルティエ タンクソロの「定額買取」として、下記の金額をご提示させて頂いております。
◆カルティエ タンクソロ SM W5200013
買取価格:160,000円
◆カルティエ タンクソロ SM WSTA0030
買取価格:140,000円
◆カルティエ タンクソロ XL WSTA0029およびW5200028
買取価格:220,000円
※2021年7月3日現在
※キャンペーン価格、条件有
繰り返しになりますがタンクソロは製造数が豊富なため、生産終了したからと言ってすぐに上記買取相場が急騰するかと言ったら、その可能性は低いでしょう。今後さらに年式を経れば稀少性が高まるかもしれませんが(マストタンクのように)、精密機器ゆえに古くなるほど価値が下がってしまう傾向にあります。そのため今使っていないタンクソロをお持ちの方は、一度買取店に査定にだけでも出してみると良いでしょう。
もっとも値崩れのしづらさもまた変わることは考えづらく、まだまだ安定して売りやすく買いやすいモデルの一つでもあります。こういった売買が活発なモデルは、多くの店舗で取り扱われるため、手放す方にとってもこれから探す方にとっても良い状況です。
とは言えいつでも欲しいモデルに出会えるとは限りません。もしご購入をお考えの方は、早めにご決断したいものですね。
②タンクソロを売却する方が気を付けたいこと
最後に買取店の立場として、現在タンクソロをご所有されている方が、売却しようと思った時に気を付けたいことをご紹介致します。
タンクソロのみならず全ての高級時計に言えることですが、まず売りたいモデルの売買実績が豊富な買取店を選びましょう。なぜなら実績があるということはそのブランドに強いことを意味し、そうではないお店と比べて高額査定が提示されやすいためです。併せて時計専門で行っているところは業者間のみならず一般ユーザーへの販売ルートを確保している可能性が高く、やはり査定額も高くなりやすい傾向にあります。なお、信頼できるお店選びを行うためにも、インターネットで口コミや創業年を調べてみることもお勧めです。
最初はどの買取店がいいのか判断しづらいと思いますので、複数店舗に査定に出して比較することも重要となります。なお、事前査定よりも実査定時に、特別な理由なく大幅に減額してくるような店舗には絶対に売ってはいけません。
その他では付属品―ボックス,保証書,取扱説明書―をお持ちであれば、必ず持ち込むようにしましょう。とりわけ保証書は、有無によって数万円も買取金額に差がつく可能性があります。
なお、「オーバーホールしてから売却した方が高く買い取ってもらえる?」といった疑問があるかもしれません。
確かに要オーバーホールの個体はその分査定額から引かれることとなったり、メーカーのコンプリートサービス明細が付属した個体は査定額アップになったりといった側面はあります。しかしながらメンテナンスにかかる費用よりもプラス査定が大きくなることは稀。そのまま持ち込むのが吉でしょう。
ただし、カルティエは外装パーツの修繕が非常に高く付くブランドでもあります。とりわけパーツ交換ともなればメーカー対応となり、その分マイナス査定となってしまうことも…そのため今お使いの方は、大切に扱っていきたいものですね。
詳しくは下記の記事をご覧下さいませ。
まとめ
カルティエの中でも薄型上品なデザイン性から、幅広い年代層に愛されてきたタンクソロをご紹介致しました。
ロングセラーであったものの、2021年に生産終了。すぐに相場が急騰することは考えづらいですが、それでも市場からはじょじょに姿を消していくことでしょう。
なお、値崩れのしづらさは人気ブランドゆえですが、ご売却時には少しでも高く売れるよう、買取店選びをしっかり行うことが大切です。
当店でもカルティエを豊富に扱っておりますので、ぜひ使っていないタンクソロがある方は、お持ち込み下さいませ。
文:鶴岡
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この記事を監修してくれた時計博士
新美 貴之(にいみ たかゆき)
- (一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
- 高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 店舗営業部 部長
1975年生まれ・愛知県出身。大学卒業後、ロレックス専門店に入社。販売・仕入れに長年従事した。
その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験を経て、2017年にGINZA RASINに入社。
店舗運営や商品管理・メンテナンスを統括し、社員教育にも力を入れている。時計業界歴24年。