1970~80年代、時計業界を賑わせたコラボレーションブランド「ポルシェデザイン by IWC」。1868年創業の伝統ある機械式時計ブランドIWCと、1972年にフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ氏が立ち上げたデザインブランド「ポルシェデザイン」がタッグを組み、1980年代を中心にユニークで革新的な腕時計を発表しています。
このコラボレーションウォッチは今やポストヴィンテージとして高い人気を集めておりますが、とりわけ「オーシャン2000」は傑出しており、今なお魅了される男性諸氏は少なくないでしょう。
そこでこの記事では、往年の名作オーシャン2000についてご紹介致します。当店でのお買取り実績がある「Ref:3500」をもとにディテールを観察しながら解説していきますので、ヴィンテージファンはぜひご覧くださいませ!
ポルシェデザイン by IWC オーシャン2000とは?
ポルシェデザイン by IWCの個性的なラインナップの中でも、最大のヒット作と言われているハイスペックダイバーズシリーズがオーシャン2000です。
旧西ドイツ軍の要請で開発されていた軍用モデルをベースに、ファーストリファレンスの「3500」が1982年より一般販売されました。
このシリーズ名からお察しのように、最大の特徴は2000m防水というオーバースペックでしょう。ちなみにオーシャンには低価格帯の「オーシャン500」も存在しますが、人気の軍配は前者に上がります。
※ポルシェデザイン by IWCには、他に「オーシャン Bund」(軍用)「コンパスウォッチ」「チタニウム クロノグラフ」等が存在します。
このオーバースペックを実現できたのは、当時のIWCの技術力の賜物。1970年~1980年代は、人類未踏の地への挑戦真っ只中の時代。そのため―実際にはそこまでの潜水ができなかったとしても、とIWC自身が断りを入れる―どんな過酷な状況下でも時計本来の価値を発揮するプロスペックが時代のニーズとして存在しました。そんな中においてIWCは、他の追随を許さないような防水性を世に送り出すに至ったのです。同時期に発売されたロレックスの二代目シードゥエラーRef.16660の防水性が1,200mであったことを鑑みれば、いかにハイスペックかがおわかり頂けるでしょう。
ちなみにオーシャン2000で、IWC初となるねじ込み式リューズが採用されました。
さらにオーシャン2000のもう一つの特徴としては、インパクト抜群のデザインではないでしょうか。
ブレスレットとシームレスになった直径42mmのケースは優美でありながら近未来的。一方で文字盤は視認性を優先したため、シンプルで精悍な意匠が用いられました。ベゼルの切れ込みは深海においても優れた操作性を発揮させるため、4時位置のリューズは誤作動を防ぐための設計となっていますが、それがまたオーシャン2000の個性を際立たせます。
このデザインは、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ氏が手掛けました。このデザインコードは、後の(そして現行の)アクアタイマーに大きな影響を与えることとなります。
当時はレトロ・フューチャーというジャンルがファッション界を席巻していましたが、その中でも特筆すべきデザインと言えるのではないでしょうか。
なお、このデザインを実現したチタンケースにも言及しなくてはなりません。
IWCはいち早く時計にチタンを取り入れたブランドとしても高名ですが、ステンレススティールや貴金属に比べて加工が難しい同素材を、ポルシェ氏の設計のままに再現したことには驚きを禁じえません。ちなみにチタンを使った理由は、時計の耐磁性能を高めるためだったとか。防水性と併せて、当時からのIWCの高度なテクノロジーを垣間見る思いです。
なお、オーシャン2000のチタンにはサンドブラスト加工が施されています。この加工法は車の塗装の下地処理などにも用いられますが、ポルシェデザインをフィーチャーしているのでしょう。ちなみにこの加工もまた、アクアタイマーのチタンモデルに受け継がれています。
このオーシャン2000は前述の通り話題を呼び、当時クオーツショックに喘いでいたIWCの窮地を救います。
その後ムーブメントやブレスレットの変更に伴い後継の「3504」や「3524」が登場。バリエーションを増やしていくとともに顧客もまた増えていくこととなりました。
ポルシェデザイン by IWC オーシャン2000のディテールを味わう
それではオーシャン2000のディテールを、Ref.3500を用いて確認していきましょう。
①文字盤・ケースの種類
オーシャン2000の文字盤バリエーションは、いくつかの系譜に分かれます。現在では、12時側にポルシェデザイン、6時側にIWCのロゴがブランド名のみで入ったものが最終型と言われ、多く流通しているようです。
Ref:3500等の初期個体に、ポルシェデザインのマーク+ブランド名ロゴがついてIWCのロゴが無いもの、またポルシェデザインのロゴはブランド名のみで6時側、12時側にはIWCのロゴが筆記体で書かれているもの等が存在します。ちなみにドイツ軍向けに製造されたモデルでは、IWCのブランドロゴが筆記体で印字されています。
また、ブランド表記だけでなく、デイト表示の位置と3時インデックスバーの長さにも変更が。
3500に搭載されているCal.375よりも3504、3524に搭載されているCal.37521のほうがカレンダーパーツが内側に位置する為、日付窓が若干ダイヤル中央に寄り、3時インデックスバーも長くなっています。
ちなみに、500m防水である「オーシャン500」シリーズ含めオーシャンシリーズは全てリューズが4時位置に配置されています。前項でも触れていますが、ダイバーの作業中、手の甲にリューズが当たってしまうのを防ぐ目的があるという、ダイバーズウォッチ特有のデザインです。
②ブレスレットの種類
ブレスレットもまた、系譜が分かれます。
3504から3524が発表されたタイミングで、ブレスの構造にも初期型→中期型と改良が。その後、一般的な後期型へと変更されており、3500や3504にも後期型ブレスのついたモデルの存在が確認できます。これは後年、結構気軽にブレスレット交換が行われたため。初期型のままの個体は非常に稀少性が高いです(そもそもの初期オーシャン2000の稀少性が高いのですが…)。
それぞれの系譜の見分け方は以下の通りです。
初期型・・・ブレスコマに内蔵された1本のピンを次のコマへと繋ぎ、縦に貫いていく構造。クラスプにはIWCの刻印が入る
中期型・・・初期型と同じく縦につながる構造ですが、ピンが2本に増えて強度が増しています。
後期型・・・現在主流となっている、ブレス側面から反対側側面へ貫通するピンで横につながるタイプの構造。
ポルシェデザイン by IWC オーシャン2000のお買取りにつきまして
当買取サロンでは、IWCのお時計を常時積極的にお買取りさせて頂いております!
販売ルートを確立しているので、現行品のみならずアンティーク・中古販売の買取も力を入れているので、お持ちの方はぜひ査定にだけでもお持ち頂ければと思います。
なお、先日ファーストモデルとなるRef:3500をお買取りさせていただきました。前述の通り、大変稀少な個体です。
30年前発行のギャランティや修理明細書が付属しており、大切に使用されていた事が伺えます。ご使用されていると、小さな擦れ傷、針サビ、文字盤の腐食があったりと状態は様々です。
今回お持ち頂いたお品物は、擦れ傷等も少なく、大事に使っていたお品物ということで、査定額も頑張らせて頂きました。
まとめ
ポルシェデザイン By IWCの、不朽の名作「オーシャン2000」についてご紹介いたしました!
現在のIWCでは珍しいレトロ&フューチャーなデザイン性,2000mという現代でも驚くべきハイスペック,そして軍用時計にルーツを持つこだわりぬかれた実用性をお伝えできたでしょうか。
なお、生産終了から既に50年が経過しようとしている現在、オーシャン2000(そしてポルシェデザイン By IWC)の稀少性はますます高まっています。比例して買取相場も上昇しており、今後の動向から目が離せません!
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この記事を監修してくれた時計博士
田所 孝允(たどころ たかまさ)
- (一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
- 高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 営業物流部長
1979年生まれ・神奈川県出身。
ヒコみづのジュエリーカレッジ ウォッチメーカーコース卒業後、アンティークウォッチ業界へ。販売・広報を経て、店長を務めていた。
現在はGINZA RASINで商品管理部のチーフに就任。仕入れや買取など、新品・中古・アンティーク問わず幅広い商品管理業務を統括している。
なお、アンティークウォッチへの情熱は健在。アンティークウォッチの買取査定はもちろん、記事執筆・監修にも力を入れている。時計業界歴18年。