時計は状態によって買取価格が異なります。
当たり前のことですが、同じ時計であっても付属品がないよりはある方が価値が上がり、動かない状態よりは動く状態の方が買取価格は高くなります。
買取店は買い取った後、その時計を売り抜かなければいけません。
鑑定士は買取をする際、まずその時計の販売金額の相場を調べます。
その後、利益を出すためには原価をいくらにしなければいけないかを考えます。
時計の原価は「買取金額」+「メンテナンス費用」で決まります。
そのため時計のコンディションを確認し、メンテナンスにどれくらい費用がかかるかを予測します。
そして原価からメンテナンス費用を差し引いた金額を、査定金額として提示するのです。
つまり高価買取を実現するには、メンテナンス費用があまりかからないことが重要になります。
とはいっても、長年使用したうえで購入直後の状態をずっとキープし続けるのは無理な話で、何か問題が生じている場合が多いでしょう。
そこで今回は状態によってどれくらい買取価格が変わるのかをケースごとにご紹介致します。
「高価買取してほしいけど、状態に不安がある」そんな方に必見の内容です!
目次
ケース① 動かない機械式時計の場合
ムーブメントに何らかの問題があって動かない場合、修理費を差し引いた金額が買取価格として提示されます。
どのくらい差し引かれるかは壊れ方にもよりますが、一般的な3針モデルであれば概ね2万~5万円ほど買取価格が下がるケースが多いです。
一般的には機構が複雑になればなるほど修理にかかるコストがかかり、クロノグラフモデルに関しては最低5万円、コンプリケーションモデルに至っては、数十万円ほど買取価格が下がります。
また、一般の修理工房では修理が難しくメーカーに送る必要がある場合は、3針モデルであっても大きく買取価格が下がる場合があります。
人気ブランド以外はかなり厳しい価格となるのが現状
ロレックスやオメガといった人気ブランドの場合は、修理費分を差し引かれても高価買取が見込めます。
しかし、低価格帯の時計やマイナーブランドといった「そもそも買取相場が低い」時計は、買取金額から修理費が差し引かれると、納得いく買取金額にはならないかもしれません。
壊れていても機械式時計は買取可能ですが、高価買取になるかどうかはやはりモデルの需要に左右されます。
ケース② 壊れたクォーツモデルの場合
クォーツモデルの場合も機械式時計と同様、査定金額は減額されます。
ただし比較的安価なクォーツ時計(~20万円)の場合は大幅に減額されるケースが多いです。
出典:https://www.seiko-watch.co.jp/
壊れたクォーツ時計は、ムーブメントを修理すれば機械式時計と同じように再販売ができます。
しかし安価なクォーツ時計の場合、それにかかる費用と売値のバランスが悪いのです。
そのため買取店は再販売せずに業者に卸すか、金が使われている場合は、潰して地金として再販するケースもあります。
どちらにせよ利益が出しづらいので高価買取は難しいのです。
電池を入れ替えて動くのであれば減額の対象にはなりませんが、動かなかった場合は大幅に買取金額を下げるケースが多いです。
ケース③ 傷が酷い場合
動いてはいるけど、キズが酷い時計。買い取ってもらえたとしても雀の涙程度だと思われている方が多いです。
しかし時計職人にかかればこのようなキズも新品同様に仕上げることが出来てしまうため、意外にも買取価格はそれほど下がりません。
キズだらけだった時計も外装研磨を施せば新品同様にピカピカになります。
そのため腕の良い職人を要する時計店であれば、細かなキズ程度なら査定価格を下げることなく買取してくれることもあるでしょう。
ただ、研磨に関して注意点もあります。それは研磨の回数です。
何回も仕上げを施した時計は徐々にケースがすり減っていき、ケース痩せと呼ばれる状態になります。
写真の時計のラグを見てください。左の写真より右の写真の時計の方が擦り減っています。
このような状態となった個体は見た目が悪くなってしまうため、買取価格は下がってしまいます。
細かなキズの多さよりも、外装研磨を施した回数の方が重要といえるかもしれません。
傷の程度にもよりますが、一般的に良いフォルムを保てるのは5回程度の研磨までと言われており、目に見えてケース痩せしている個体は査定価格ダウンを覚悟しなければならないでしょう。
大幅ダウンにつながるキズの箇所
傷が多くても査定金額に影響はないとお伝えしましたが、以下の項目に関しては査定に影響があります。
「ガラスのキズ」
「凹凸のあるベゼルにキズ」
「エッジの凹み」
これらの箇所は研磨や修復が効かず、そのままの状態での販売となります。そのため高値で売ることができませんので、当然、買取金額も下がってしまいます。
また、研磨で取り除くとこができない深いキズがある場合も査定金額は下がります。
ケース④ ブレスが弛んでいる場合
革ベルトは販売時にベルトを交換するため、買取価格に大きな影響を及ぼすことはありません。
しかし、金属ブレスレットは交換するわけにいかないため、ブレスレットの状態も査定対象となります。
ケースと同じで細かなキズは研磨にて落とせますが、ブレスの弛みだけはどうしようもありません。ブレスは日々の使用によって少しずつ消耗しており、ブレス同士の隙間が広がってくると、横に寝かせても立たなくなってしまいます。
写真のような状態になってしまったブレスレットは買取価格がダウンします。2000年以前のモデルによく見受けられる経年劣化ですが、概ね2万~3万円ほど買取価格が下がる傾向です。
また、金無垢モデルに関してはステンレスベルトよりも更に顕著に差が現れます。
ケース⑤ 社外パーツが使われている場合
何回かオーバーホールが施された機械式時計は、一部のパーツが純正のパーツから社外パーツに変えられている場合があります。
格安の修理会社に依頼すると稀にこのような状況になりますが、製造年が古くパーツが手に入りづらいモデルならば優良業者であっても社外パーツを使う場合もあります。
このような時計を買取してもらう場合、査定にどう影響するかは気になるところでしょう。
結論を述べますと、基本的には査定金額に影響することはありません。
買取店からすると、買取の度にパーツを分解するわけにはいかないので、純正パーツであろうと社外パーツであろうと同じ査定額を提示します。
どちらのパーツを使っていても精度がしっかりしていれば問題ないからです。
ただ、ロレックスの王冠透かしガラスのような分かりやすいパーツが社外製に変えられていた場合は査定金額が下がります。
ケース⑥ 時計がカスタマイズされている場合
リダン・アフターダイヤ・PVD/DLC加工といったカスタマイズを施す方が近年増えていますが、これらの時計も問題なく時計店で買取をしてもらうことができます。
ただ、査定金額は大幅に下がってしまうことが殆どです。
加工された時計はオリジナルを上回る豪華さを誇りますが、それと引き換えにメーカーでのメンテナンスが受けられなくなります。その理由はメーカーではカスタムされた腕時計を改造品とみなすからです。
メーカーでメンテナンスを受けられない時計を購入する方は少ないです。
売り切れないリスクを抱えることとなりますので、買取価格が下がることはやむを得ません。
カスタマイズした時計に関しては「メルカリ」や「ヤフオク」を使って、ご自身で買取をしてくれる方を見つけた方が高く売れるでしょう。
参考記事:これって売れる?リダン、アフターダイヤ、PVD、DLC加工等のカスタマイズされた腕時計の査定について
ケース⑦ ローンの残債がある場合
ローンで買ったけど、まだ残積が残っている時計。
この時計は基本的に買取をすることはできません。
なぜなら完済するまで時計の所有権はローン会社にあるからです。
売却したい場合は残額を一括返済し、完済証明書とともに時計をお持ちいただく必要があります。
ケース⑧ 偽物(スーパーコピー)の場合
最後に本来あってはならないケースですが、偽物を持ち込んだケースをご紹介します。
当然のことながら、時計店では偽物の買取は不可能です。
近年の偽物は精密に作られていますが、プロの鑑定士の目はごまかせません。偽物であることを知らずに買取に持ち込まれる方もいらっしゃいますが、そのような時計はお返しすることになります。
また、偽物であることを知りつつ買取依頼を出すことは犯罪になります。仮に上手く鑑定士を騙せたとしても、買取後にすぐに偽物であることはわかりますので、警察に届け出を出すことになります。
警察を通し、防犯カメラの映像が各時計店に送られ、再び同様の犯罪を起こそうとした際に逮捕されるケースが多いです。
最後に
時計の持ち主である限りは、どんな状態の時計であっても「高く売れる」時期を模索するべきです。
壊れている時計をしまい込んでいる方も多いですが、折角相場がピークまで上昇しているのに「壊れてるから売れないだろう」と勘違いしてチャンスを逃してしまうのは、とてももったいないことです。
壊れていても、キズがあっても、時計は売れます。
ロレックスやオメガといった需要の高いモデルを所持しているのであれば、常に「相場」は意識しておくとよいでしょう。
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