平成の始まりとともに消費税が施行されてはや30年超。2019年10月、4度目の増税でいよいよ10%の大台に乗るとあって、「駆け込み需要」が大きく取沙汰されるようになりました。
2014年に5%から8%に引き上げられた時は3%アップや7年ぶりの増税であったためか、家電や宝飾品などと言った高級嗜好品市場が活気づいたものです。
こういった増税を前に、最近とみに「増税前に所有している高級時計を売った方がいい?それとも増税後の方が買取額は高くなる?」といったお問合せをいただきます。
確かに増税前に需要がアップするなら買取額は上がります。しかしながら増税後、メーカーが国内定価を改訂する可能性があり、価格アップとなれば当然買取額はそれに比例して上がります。
そもそも、国内外で景気の鈍化が言われている中で、駆け込み需要なんて本当にあるのでしょうか。
そこでこの記事では、2019年10月より始まる消費増税が与える高級時計の買取市場および買取査定額の変化について解説いたします。
大切な時計、少しでも高く売れるのはいつ?
目次
消費税10%前夜。日本人の消費傾向や経済動向に変化はあるのか?
2019年10月1日より、従来8%であった消費税が10%へと引き上げられます。
2014年4月に5%⇒8%に変更されてから約5年ぶり。今回の増税は国内初となる軽減税率や、キャッシュレス決済へのポイント還元(2020年7月まで),自動車・住宅ローン減税などといった、10月以降の景気対策とともに打ち出される形となりました。しかしながらこれらと大きくは関わらない家電、家具、アパレル、宝飾品、そして高級時計市場などでは、増税前の駆け込み需要が大きくフォーカスされています。
特に高級時計は、近年の好調ぶりも相まって、業界全体で注目している状態です。
「前回は3%増だったけど、今回は2%だからそこまで上がらなのでは?」と言われることもありますが、100万円のロレックスを買ったら、108万円⇒110万円です。1000万円のパテックフィリップやリシャールミルなどともなれば、20万円増です。かなり大きいですよね。
事実、国内消費が悪化ぎみと言われている中で、高級時計はそうでもありません。
と言うのも、2019年8月29日に内閣府が発表した消費動向調査によると、今後半年間の消費者態度指数(消費者マインドを指数にしたもの。2人世帯以上、季節調整済)は前月比0.7ポイント低下の37.1pt。11か月連続で悪化していることが判明しました。
小売店や百貨店などでは駆け込み需要を見込み、秋冬物を前倒しで投入したり、高額商品販売に力を入れたりしていますが、消費者の心理は冷めているようです。
「増税に備えて貯蓄」といった、節約志向が高まっていると思われます。
また、天候不順や米中貿易摩擦、日韓関係の悪化などといった地政学リスクも相まって、2019年7月に発表された全国百貨店売上高は2.9%減と4か月連続マイナス。コンビニやスーパーマーケットでも売上高は伸び悩んでいる状態です。
このように景気が下押しされつつある中で、高級時計市場だけは伸びています。
スイス時計協会によると、2019年上半期のスイス時計の日本への輸出高は大幅成長(中国、シンガポールともに)。特に3000フラン(日本円で約32万円)以上の時計が好調だと言います。
弊社の高級時計販売店GINZA RASINでも7月・8月期はボーナスの影響もあって売上は伸び続けています。
特にロレックス、チューダー、オメガ、タグホイヤー。あるいはパテックフィリップやオーデマピゲなどの人気ブランドが好調です。
消費増税の前後で高級時計の買取額はどう変わるか
ブランドやモデルにもよるのですが、一般的に以下の要素・時期で時計の買取額が上がります。
■円安の時(高級時計、特に海外ブランドの時計はドル建ての外国為替相場と連動しているため)
■ボーナスや入学・就職シーズンなど、高級時計需要が増加する時
■メーカーが定価を値上げした時
現在はやや円高ぎみとなります。
また、これから消費税がアップした時、メーカーが国内定価を上げる可能性は十二分に考えられます。
とすると、消費増税後、円安になるのを待ちつつ時計を売った方が、より高く売れる可能性があるのでしょうか。
でも、ここで忘れてはいけないのが、今、高級時計市場は駆け込み需要が見込まれている、ということ。
もちろん現在の好調ぶりが駆け込み需要だけに起因しているとは限りません。今後、ますます伸びが期待されるかもしれません。
しかしながら、多くの時計店が駆け込み需要を見込んで、人気ブランドのモデルの在庫確保に走っている状況です。
在庫がなくてはそもそも売るものがなく、このビッグウェーブに乗ることができません。
駆け込み需要であろうとなかろうと、他社よりも品揃えを豊富にしようと、多くの時計店―当店含め―で積極買取を行っている、という現状があるのです。
つまり、相場は誰にもわからないので正しく予測はできませんが、今こそ一つの大きな売り時を迎えている、と言っていいでしょう。
消費増税前に高級時計売る・売らない?
前述の通り、駆け込み需要を見込んだ時計店が積極買取を続々と行っている中で、今高級時計の大きな売り時を迎えている、と言えます。
一方でロレックスのように時が経つほど伸び率が上昇し続けた過去事例や、生産終了などによってプレミア価格となり、今より高額査定となるものもあるでしょう。
しかし、一つ言えるのは、高級時計はパソコンやカメラなどと同様に精密機器であるため、使っていないならなるべくお早めに売った方がいい、ということです。
機械式時計にしろクォーツ式時計にしろ、経年によって内部の油が劣化したり、温度変化などで思わぬ故障を招いたりしかねません。
もちろん「相場上昇を見込んでいるからまだ待つ!」といった考え方もありますが、売りたいと思った時が一番の売り時であることは間違いありません。
まとめ
2019年10月に控えた消費増税を前に、高級時計の買取額は変化するのか。また、少しでも高く売るためにはいつがお勧めかをご紹介いたしました。
現在駆け込み需要を見込んだ高級時計店が、在庫確保のために多くの人気ブランドの人気モデルに対して、積極買取を行っている状況です。また、時計はそもそも精密機器であるため、使っていないのであれば早めに売ろう、ということをお伝えできたでしょうか。
もちろん相場の上下は正確に予測できるものではありませんが、少しでも時計の売却をお考えの方は、一度査定だけでも出してみてくださいね。現在の高級時計市場の好調のあおりを受けて、思わぬ金額が付くかもしれません。
この記事を監修してくれた時計博士
新美 貴之(にいみ たかゆき)
- (一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
- 高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 店舗営業部 部長
1975年生まれ・愛知県出身。大学卒業後、ロレックス専門店に入社。販売・仕入れに長年従事した。
その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験を経て、2017年にGINZA RASINに入社。
店舗運営や商品管理・メンテナンスを統括し、社員教育にも力を入れている。時計業界歴24年。