時計を買取してもらうならば、一円でも高く買取してほしい。
査定を依頼される方ならば誰もが思うことでしょう。
買取相場は外国為替や、そのモデルの人気、国内流通量によって日々変動しています。また、時計の買取は減点方式となっており、減点ポイントがあればその分査定額は下がり、減点ポイントがなければ相場通り最大買取額での買取となります。
そこで今回は時計の鑑定士はどこを見て「買取査定価格」を決めているのかをまとめてみました。減点ポイントをうまく回避できれば高額査定が期待できますので、時計を売る予定のある方は是非ご一読ください。
目次
時計の買取査定価格を決める11のポイント
時計買取において最も重要なのは「いつ売るのか」ということです。相場が上り調子の時に売れば得をしますし、相場が下落しているときに時計を売れば損をします。高価買取を実現させるには何よりも適正な時期に売ることが大切です。
しかし、たとえ適切な時期に時計を売ることが出来たとしても、時計の状態が悪ければ大幅に査定価格が減額されてしまうこともあります。鑑定士が時計のどこをチェックしているのかを知り、少しでも減額されないように時計の扱いに気を付けることが大切です。
査定ポイント① ケースのエッジが削れていないか
長く使用された時計はケースのエッジが丸くなっていることがあります。
丸くなったエッジは高級時計特有のシャープさを損なってしまうため、マイナス査定となります。
これを避けるためには過度な外装仕上げはしないこと、そして丁寧に扱うことが大切です。
査定ポイント② ガラスのエッジに欠けはないか
現在製造されている高級時計は殆どのモデルにサファイアクリスタルが使われています。このガラスは非常に硬度が高く、ちょっと擦っただけではキズつくことはありません。しかし、エッジに関しては傷つきやすく、カケが見受けられることがしばしばあります。
そのため鑑定士は縁にキズがないかどうか爪でなぞってチェックしています。経験豊富な鑑定士であれば、僅かな欠けであっても見逃すことはありません。
査定ポイント③ 文字盤にヤケやヒビが入っていないか
時計の文字盤は紫外線に当たることで「ヤケ」と呼ばれる色褪せが発生します。このように文字盤が変色してしまった個体は、文字盤を交換して元の状態に復刻させることになります。
アンティークモデルであれば経年変化はその時計の味として、評価が高まることもあります。しかし近年発売された時計においてはヤケやヒビがあることは決して良いことではありません。査定はマイナス査定となります。
こうならないために、直射日光の当たる場所や真夏の車内などには絶対に置かない事をオススメいたします。
査定ポイント④ リューズに不具合がないか
時計のパーツの中で最も所有者に操作されているパーツがリューズです。特に手巻き式に関しては毎日リューズが複数回巻かれるため、非常に負担がかかります。
鑑定士はリューズがぐらつかないか、手応えに違和感がないかを調べます。
リューズ周辺は繊細なパーツが絡み合っており、誤ったリューズの巻き方をするとパーツが破損します。リューズに不具合が生じている時計はマイナス査定となりますので、リューズを巻く時に雑に使わないよう気をつけましょう。
査定ポイント⑤ ブレスレットが弛んでいないか
メタルブレスレットはずっと使い続けていると「伸び」てしまうことがあります。
特にロレックスのデイトジャストに採用されるジュビリーブレスなど、細かいコマのものだとその傾向が顕著です。
ブレスレットが弛んでいないかは時計を水平に持ち上げた時に分かります。もし弛んでいた場合がブレスレットが重力に負けて下がります。
このような状態になった時計は大幅なマイナス査定になることを覚悟しなければなりません。
査定ポイント⑥ ベゼルが正常に回転するか
回転ベゼルとケースの間に塵やホコリが溜まると、うまく作動しなくなることがあります。固着した汚れが頑固な場合は仕上げをしてキレイな状態にすることが必要です。
また、汚れ以外の原因としてパーツ自体が破損していることもあり、その際は交換となります。
いずれにせよベゼルが正常に回転しない場合、鑑定士がその時点ですぐに原因は突きとめるのは難しいため、壊れているものと判断し査定されます。ベゼルに挟まった埃や汚れをその日のうちに落としておくことが大切です。
また、逆回転防止ベゼルが両回転する場合もマイナス査定となります。
この事例の原因はベゼルではなく、ケース側に搭載される逆回転防止のバネ(ツメ)が破損したことによるものです。ダイバーの命を守る逆回転防止ベゼルとしてはこのままでは使えない為、修理が必要となります。
査定ポイント⑦ プッシュボタンの感触が正常がどうか
クロノグラフ機能を搭載しているモデルは必ずクロノグラフを作動させるプッシュボタンが備えられています。
買取の際にはこのボタンが正常に操作できるかどうかはもちろん、押した時に引っかかりなどがないか等も鑑定士はチェックします。
プッシュボタンが錆びていたり汚れが溜まっている場合、ボタンに不具合が起こるケースもしばしば見受けられます。仮にプッシュボタンに問題があった場合はマイナス査定となることを覚悟しなければいけません。
そうならない為にも、日々のメンテナンス時にはこの部分の拭き掃除も忘れないようにしましょう。
査定ポイント⑧ 直すことのできないキズがないか
時計を日常的に使用していると、擦り傷やうち傷がつくことは避けられません。
ただ、深い傷や打痕でなければ研磨で取り除くことができます。
一見キズだらけに見える時計であっても、キズが深くなければ新品と見間違うほど綺麗になります。
しかし、高いところから落とすなどして強く打ち付けてしまった場合、写真のように凹んでしまう場合があります。この深さまでキズついてしまうと研磨では直せないため、マイナス査定となります。尚、どのくらいマイナス査定となるかはキズの程度次第です。
査定ポイント⑨ オーバーホールされているか
基本的に高級時計は買取した後、自社もしくは専門業者でオーバーホールを施してから再販売されることが多いです。
しかし内部機械の状態が良ければオーバーホールをせず再販売できるため高い買取価格を提示できます。売りに出す1年間以内にメーカーによる正規オーバーホールを受けていた場合、査定が上乗せされる可能性もあります。
わざわざオーバーホールしてから査定依頼を出される方もいますが、上乗せ分よりもオーバーホール代の方が高くなってしまうため、トータルでは損をします。そのままの状態で売りに出す方が賢明でしょう。
査定ポイント⑩ 精度に問題がないか
ステータス性や視覚的美しさ。高級時計には様々な魅力がありますが、時間の経過を計る「計器」であることには変わりありません。
その時計が本来もつ精度よりも著しく精度が悪くなっている場合、時計内部に何らかの異常が発生している可能性が高いです。
もし精度に異常が見つかった場合はパーツ交換や修理が必要となるため、査定額はマイナス評価となります。
査定ポイント⑪ 製造年式の確認
製造期間が長かったモデルは年式によって微妙に仕様が違うことがあります。同じモデルであっても価値が異なるため、年式は非常に重要です。
特に仕様の違いがなかったとしても、市場にあまり出回っていない年式の個体は価値が上がることもあります。
いずれにせよ時計の年式は少なからず査定に影響を及ぼしているということを覚えておいてください。
最後に
今回は鑑定士が時計のどこを見て査定価格を決めているのかを紹介しました。
ただ、結局のところ一番大切なのは「時計を丁寧に扱うこと」です。
時計を丁寧に扱っていれば減額に値するキズはそうそう付くものではなく、比較的新しいモデルであれば最大査定額が提示されるケースが目立ちます。本体の状態がよく、付属品も全て揃っていれば期待通りの査定額となることが多いでしょう。
少しでも時計を高く売りたい人は日頃から時計を大切に扱うことを今一度心がけてください。
関連記事
時計を売るならどこがおすすめ?時計買取専門店を選ぶ時の5つのポイント
オーバーホールしてから売った方がお得なの!?高く売るためのポイント
この記事を監修してくれた時計博士
新美 貴之(にいみ たかゆき)
- (一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
- 高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 店舗営業部 部長
1975年生まれ・愛知県出身。大学卒業後、ロレックス専門店に入社。販売・仕入れに長年従事した。
その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験を経て、2017年にGINZA RASINに入社。
店舗運営や商品管理・メンテナンスを統括し、社員教育にも力を入れている。時計業界歴24年。