初めての初任給で買ったロレックス。親から譲り受けたオメガ。でも、動かないしボロボロだし、何十年もずっと箪笥に眠ったまま・・・そんな状態の腕時計をお持ちではありませんか?こういった腕時計をジャンクなどと呼ぶのですが、今、ジャンク腕時計の買取ビジネスが急速に拡大しています。
特に1980年代以前に製造されたアンティークが再評価されてきており、昔に購入した時計が高く売れて思わぬ得をした、という方も少なくありません。
とは言え「本当にこんなボロボロのゴミみたいな時計が売れるの?」そんな疑問を持つと思います。
そこでこの記事では、状態別に、製造年式の古いアンティーク時計の買取を解説いたします!
目次
腕時計買取市場はジャンク品に値段がつく時代になった
かつて不要品を「買ってもらう」という考え方だった腕時計の買取市場。中古品やアンティーク品など古い時計が再評価されるにつれ、今や買取店が時計オーナーに「売ってもらう」時代に変遷しつつあります。
数十年前に当時の高級時計を購入された方は、同年式のモデルの現在相場を見たら驚くかもしれません。それだけ、古い時計の価値が上がっているのです。
例えば「現行品より安く買える」「10万円台で手に入れられる」といった立ち位置だったロレックスの手巻きオイスター プレシジョンやSS製デイトジャスト。現在は30万円超えが普通となってきました。また、人気イマイチだったGMTマスターなどに至っては、20万円台でも購入できていたものが今では300万円超えの個体もあるのです。もちろん物価や経済状況の違いはありますし、100万円を超える個体は一部です。それでもここ十年ほどの時計市場の拡大とアンティーク品の高騰率は目を見張るものがあります。
この市場を維持できているのは、売買の対象物が「腕時計」であるからに他なりません。なぜなら、特に機械式時計に言えることですが、メンテナンスを施せば末永く使い続けられる精密機器である、という側面を持つためです。
パッと見はボロボロで壊れていても、修理したり研磨したりすれば時計として見違えるケースは少なくありません。時計製造の歴史は長いため、こういったメンテナンス技術やノウハウをメーカーでなくとも有している専門業者が多い、ということも買取市場拡大の大きな要因でしょう。
つまり、「どうせゴミでしょ」と思っていた時計に、より高値がつく時代を迎えているのです。もちろん何十万円も利益が出た、というのはそう多い事例ではありません。でも、箪笥に眠っていたら0円だった時計が、お小遣いくらいにはなるかもしれませんよ!
腕時計の状態別に見るアンティーク買取
それでは時計の状態別に、アンティークの買取について解説いたします。
状態①ブレスレットのヨレやサビがひどい・またはブレスもベルトもない
使い倒した腕時計は、ブレスレット部分が大きく劣化していることが少なくありません。腕に密着させるため皮脂や汗が付きやすく、それを放置して錆びてしまったり、小さいコマが連なるブレスレットは伸びてヨレてしまったりする個体は思いのほか多いです。
また、革ベルトに至っては臭いや汚れがひどくて捨ててしまった、という方もいらっしゃるかもしれません。
結論としては、ヘッド部分があれば買取に問題はありません。
もちろん稀少な個体はブレスレット・ベルトがオリジナルであるほど査定額は上がります。また、状態の良い純正パーツが付いている場合も、評価は高くなります。
でも実は、これらは非常にレアなケースです。
ブレスレットは「消耗品」でもあるため、アンティークと言われる時計(一般的には1970年~1980年代以前に製造された個体をそう呼ぶ)でオリジナルのままを維持しているものは稀少。むしろ、交換されていることがほとんどです。
そのためヘッド部分(時計としての機能)に問題がなければ、そのブランドのそのモデルの価値は適正に評価されます。
状態②動かなくなって時間が経つ~機械式・クォーツ式時計~
何十年も放置させた大きな原因は「故障」だった―そういった方もよくいらっしゃいます。
メンテナンスに出そうと思ってそのまま日が経ってしまった・・・意外とメンテナンスが高くて放置・・・そんな理由でいつの間にか箪笥の肥やしになってしまった、というものです。
動かない=時計としての価値がゼロというわけではありません。と言うのも、前述のように機械式時計はメンテナンスをしてずっと使い続けていくことが前提です。そのため、修理技術やノウハウが広く知れ渡っており、買い取った後に提携工房で修理する、というのが一般的なアンティーク買取の業者内での流れです。当然ながら修理費用は査定額から減額されますが、時計としての価値はきちんと評価されます。
ただし、ムーブメントやパーツの交換が必要なほど劣化してしまっていると、ちょっとやっかいです。と言うのも、それぞれのメーカーには「あるモデルやムーブメントの生産終了後、パーツ類や製造ノウハウを保管しておく期間」があります。その期間を過ぎると破棄されてしまい、メーカーは交換・修理の責任を負いません。
そのため純正パーツの入手が困難となり、「交換できない」事態だと、時計としては使えなくなってしまうのです。
とは言え全てのメーカー・モデルがこの図式に当てはまるわけではありません。
例えばパテックフィリップやオーデマピゲ、IWCなど「永久修理」を掲げているメーカーもあり、こういったところは例え何十年・何百年経った個体であっても、メーカーが存続している限りは修理・交換対応ができるため、時計としての価値が保たれます。
また、生産終了したものであっても、製造期間が長くよく流通したものであれば今なおパーツが出回り、メーカーでなくとも交換対応が可能なケースは多いです。例えばロレックスのCal.1560やCal.1570。1965年頃製造されていたオイスターパーペチュアル デイトやデイトジャスト、エクスプローラーIなど幅広いモデルに搭載されてきた名機ですが、よく出回っていたことやシンプル機能なことから、今なお流通量が豊富です。
さらに、セイコーやオメガのCal.500番台、ETAなどのムーブメント会社から供給された機械も流通豊富なアンティークムーブメントとなります。
なお、クォーツ時計で電池切れを放置して、そのまま液漏れを起こした場合もムーブメント交換が必要となります。この場合も交換可能かどうかが評価の分かれ目となります。
前述の通り、修理・交換費用分は査定額から減額はされるでしょうが、「値段がつかない」と諦めて捨ててしまってはもったいない。動作面に不具合がある場合でも、一度信頼できる買取店に相談してみましょう。
状態③時計のガラスが割れている・欠けている
ムーブメントの故障と同じくらい放置の大きな理由となるのが、ガラスの割れや欠けですね。
現在、高級腕時計のガラスにメインで使われているのはサファイアクリスタルという、モース硬度の高い素材であるため衝撃や傷に強くなりますが、かつて生産されていた時計はプラスチックやミネラルガラスです。そのため割れてしまい、視認性に大きな影響を与えている個体は少なくありません。
しかしながら割れ・欠けがあった場合でも、ムーブメントと同様に交換可能であれば問題ないことがほとんどです。
特にプラスチックの場合は交換品も安価なことが多く、減額も抑えることができるでしょう。
とは言えガラスも交換できない場合があります。特に防水モデルで、ガラスとケースの繋ぎ目に特別なパッキンを使用していたり、スクエア型など独特のフォルムのものがこれに当たります。純正品がないとなると、交換対応ができないのです。
一方で超レア個体などであれば、ガラスの状態にかかわらず高値で動かず、ということもあります。
どんな状態でも、まずは一度査定にお出しください。
状態④錆び、傷、汚れがひどい
長年愛用されたからこそ、どうしてもケースやブレスレットについてしまう錆び、傷、汚れ。文字盤や針などに経年による影響を受けているものもあります。
目立ってしまうくらい広範囲にこれらが及ぶと、どうしても見た目は悪くなってしまいます。
外装劣化の種類によっては研磨することで目立たなくすることが可能です。また、ケース構造や劣化部位によっては、新品パーツに交換することで見違えさせることもできます。
それもできないほど外装がボロボロ・・・そんな時でも、まずは査定に持ち込むことをお勧めいたします。なぜかと言うと、アンティークや中古品の価値が見直されるにつれ、経年による劣化を「ヴィンテージテイスト」「良いエイジング」と捉える風潮・認識が広まっています。
色々と基準もあるのですが、傷や変色、錆びといった一目でわかる年式の古さがあればあるほど価値を持つことさえあります。
↑チューダー プリンスデイト のギャラクシーダイアル
例えば文字盤が経年劣化でまだら模様になってしまった個体を「ギャラクシーダイアル」と呼びます。
また、近年ではあえて経年による変化を楽しむために、変色しやすいブロンズなどの素材を新品に用いることがあります。
このように、アンティークに興味のない方からしてみれば「ボロボロ」と捉えられるような外装でも、実は大変価値のある経年変化であった、ということが腕時計ではえてして起こりうるのです。
状態⑤時計として動かないけどゴールドやダイヤモンドが使われている
ゴールドなどの貴金属やダイヤモンドなどの貴石が使われている場合、高額査定となる可能性があります。
理由は二つ。まず一つ目は素材の価値がつくためです。
ゴールドやダイヤモンドは経年変化が非常に少ない素材で、何十年、何百年経っても変色や錆びなどの影響を受けることがほとんどありません。そのためリサイクル可能な資源であり、時計としての価値が全くなくなったとしても、素材分はその素材の価値が暴落しない限り評価され続けるでしょう。
そしてもう一つの理由は、こういった変化の少ない素材を使っていることで、コンディションを良好なまま保っている個体も少なくない、ということです。
確かに錆びや変色などはアンティークならではの風合いを醸し出しますが、やはりキレイである方が売りやすく買いやすい、という事実もあります。
そのため過去のステンレススティールよりも、ゴールドやプラチナ、そしてダイヤモンドといった変色の少ない素材を使っている時計の方が高く売りやすい、というわけです。
ただし、アフターダイヤなどメーカー純正モデルに後からご自分でカスタマイズした個体については査定額が大幅に下がる,あるいは買取を受け付けないといった店舗もあります。ご注意ください。
最後に:アンティーク時計は一度無料査定へ!
壊れいている。あるいはボロボロ。そんなアンティーク腕時計の買取についてご紹介いたしました。
本項でも何度か触れているように、アンティークにあまり興味がない方にとってはゴミ同然と思われるような個体でも、驚くような値段がつく場合があります。また、箪笥の中で眠らせたままでは、価値がつくものも0円のままで、宝の持ち腐れとなってしまいます。
また、腕時計は確かに経年劣化によって価値を増すこともありますが、やはりそこは精密機器。いらなくなったら、売るには早いに越したことがありません。
まずは時計買取店に査定にお持ち込みください。
当店では店頭にお持ち込みいただく他、宅配買取なども承っております。もちろん査定は無料ですし、お気軽にお申込みいただけるLINE査定なども行っておりますので、「値段がつくのかな?」と疑問な個体もお問合せしやすいと自負しております。
なお、アンティーク時計の価値の査定は大変難しく、ノウハウのないお店だと適正価格をつけられないといったこともございます。
アンティーク時計の買取実績が豊富なお店に持ち込みましょう!
この記事を監修してくれた時計博士
田所 孝允(たどころ たかまさ)
- (一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
- 高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 営業物流部長
1979年生まれ・神奈川県出身。
ヒコみづのジュエリーカレッジ ウォッチメーカーコース卒業後、アンティークウォッチ業界へ。販売・広報を経て、店長を務めていた。
現在はGINZA RASINで商品管理部のチーフに就任。仕入れや買取など、新品・中古・アンティーク問わず幅広い商品管理業務を統括している。
なお、アンティークウォッチへの情熱は健在。アンティークウォッチの買取査定はもちろん、記事執筆・監修にも力を入れている。時計業界歴18年。